都立高校の校長の時、部活を見学に行くのがとても好きでした。挨拶(あいさつ)が一番上手だったのは野球部でした。野球部の生徒たちは、練習中でも私の姿を見つけると、全員が私の前に全速力で駆けて来て整列し「こんにちは!」と元気よく挨拶してくれました。野球部の伝統でしょう。甲子園球場の高校野球を観ていても、全員がきちんと整列する姿は清々しいものです。挨拶の「挨」は「ひらく」、「拶」は「せまる」、すなわち「心を開いて相手に近づいていく」という意味です。よい人間関係を築くための積極的なキッカケを作り出し、「私はあなたに好意を持っていますよ」という意思表示です。
剣道部にも思い出す風景があります。正座をして、剣道の防具を着ける姿は、凛としていて魅力的です。稽古の前後には「黙想(もくそう)」をします。正座して、軽く目を閉じ、呼吸を整えると、不思議と「心が整い・落ち着く」ものです。毎日の生活の中で、「黙想」はできなくても、「心が整い・落ち着く」方法があります。それは、履き物をそろえることです。剣道部にOさんという女子部員がいました。彼女は剣道場の入口の履き物が少しでも乱れていると、いつもそれを揃えてくれていました。日常生活の立ち居振る舞いもとても美しい生徒でした。「はきものをそろえる」という詩があります。
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「はきものをそろえる」
はきものをそろえると 心もそろう。
心がそろうと はきものもそろう。
ぬぐときに そろえておくと
はくときに 心がみだれない。
だれかが みだしておいたら
だまって そろえておいてあげよう。
そうすればきっと
世界中の人の心も そろうでしょう。
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長野県の円福寺の住職であった藤本幸邦さんの詩です。
「あいさつ」や「はきものをそろえる行動」を続けていると、「行動」が「習慣」となり、必ずよい変化が現れると私は信じています。CASAの基本ルールの「
ニピピ」。「あいさつは
ニコッ!」「くつは
ピタッ!」「かたづけは
ピカッ!」が、今では子どもたちには「習慣」として身についています。初めてCASAに来てくれた子には、先輩がきちんと伝えてくれています。
小沼 好宏