蒸し暑い日が続いています。空模様も気まぐれで、雨が降ったりやんだりを繰り返しています。「朝のあいさつ」をしながら小学生たちを観察していると、傘を開いたり閉じたり、どうしたらいいのかその扱いに困っているようでした。そんな中、小学1年生のO君が、いつものとおり「おはようございまーす!」と元気に走っていきました。ランドセルにぶら下げてある傘が、背中で踊っていました。踏切に入った瞬間に遮断機の警報が鳴ったため一瞬立ち止まりました。そのため、運悪くランドセルにぶら下げていた傘が、踏切の真ん中で線路の上に落ちてしまいました。O君は傘に気づかず、そのまま踏切を渡り切りました。
「危ない!」と思わず声が出でました。「あのままでは電車が傘をひいてしまい事故につながるなるかもしれない」と一瞬のうちに頭の回路が作動しました。その瞬間、私と朝の会話をしていた6年生男子のT君が、踏切めがけて駆けだしました。踏切まで約20m。遮断機は半分降りかけていましたが、T君は見事に傘を拾い上げ踏切を渡り切りました。私の足も反応したのですが、T君の俊敏さと一瞬の判断力には遠く及びませんでした。
踏切を挟んで、「その傘、1年生のO君に渡してね!」と私、「オッケー!」と手を振るT君。電車は「puo-nn」という警笛を残し通り過ぎていきました。その音は、「危ないよ」ではなく「ありがとう」という優しい音に聞こえました。T君は、サッカー少年で、日ごろから体を動かしています。学校では少々元気過ぎて「やんちゃな少年」との評判もあるようですが、こんな活発な少年には、その良さを失わずにさらに真っすぐ育っていって欲しいと願っています。
小沼 好宏