CASAには
「ニピピ」というルールがあります。「あいさつは
ニコッ!」「くつは
ピタッ!」「かたづけは
ピカッ!」という3つのルールの最初の文字をまとめたのが
「ニピピ」です。CASAに来たらまず最初に利用カードに氏名と来た時刻・帰る予定の時刻を記入し、スタッフに提出します。その際にニコッ!と笑顔であいさつして手渡します。玄関では、くつをピタッ!とそろえてから部屋に入ります。バラバラに脱いで入ると「コラッ! 出禁だ!」と注意を受けます。くつをそろえると心が落ち着くと考えています。そして最後に、かたづけをピカッ!として、心も掃除して帰るというルールです。
このルールは、子どもたちと一緒に考えたものですが、私の心の深いところに眠っていた一つの想いもありました。今でも手元に新聞の切り抜き(産経新聞H9.6.13)があります。将棋の谷川浩司棋士のある対局敗戦後の姿がこう書いてあります。「対局後の誰もいなくなった対局室で、谷川さんは盤上の駒をていねいに駒袋にしまっていた。勝負のついた後の駒の片付けは記録係がやる。それを黙々と谷川さんがやっていた。一枚一枚の駒に『ごくろうさん』と内心で声をかけているような光景で、胸を打たれた。きちん駒をしまった谷川さんは、私たちに黙礼をして立ち上がった。
ほれぼれとするような敗者の姿であった。こういう敗者であればこそ、また勝者となり得るでのであろう」と。
今、将棋界は22歳の藤井聡太棋士が強さを発揮しています。谷川棋士は、1962年生まれで今62歳のベテラン。藤井棋士が2023年6月に20歳10か月で「最年少名人位獲得」を更新するまで40年間の長きにわたってその記録(当時21歳2ヵ月)を保持していました。谷川棋士と藤井棋士の間に羽生善治棋士世代がいます。将棋の対局をみていて、いつも思うことがあります。差し始める前には、必ず、「お願いします」と礼・あいさつをします。そして、これがとても厳しい世界だな痛感するのは、勝ち目がなくなって投了する時には、必ず、「負けました」と言って敗者側が潔く意思表示をするのです。対局が終わった後には、お互いにどの手が良く、どの手が悪かったのかという「感想戦」を行います。この「感想戦」は、対局後の心の整理・かたづけをしているのでしょう。勝負が終わったらノーサイドです。この
将棋界が大切に守っている礼・マナーをとても敬服しています。新聞記事のH9とは1993年で今から31年前です。その間、私の心の深いところに眠っていた想いを、今、CASAの
「ニピピ」の中にも活かし大切にしています。この想いを子どもたちにも継承して行きたいと考えています。
小沼 好宏